【連載】アートのある暮らし vol.4 ふたりの指先で決めるアートの家。

PLART編集部 2017.3.15
SERIES

3月15日号

連載 アートのある暮らしとは?

日本のアートには3つの壁があります。
「心の壁」アートって、なんだか難しい。価値がわからない。
「家の壁」飾れる壁がない。どうやって飾るかわからない。
「財布の壁」アートは高くて買えない。買えるアートがわからない。
そんな3つの壁を感じることなく、アートのある暮らしを素敵に送ってらっしゃるお家を取材します。

 

アートとは、ただそこにあるだけのものではなく、生活のなかに息づいて、人と人とをつなぐ媒介になるものなのかもしれない。そう感じさせてくれたのが、山本レオさん・レナさんご夫妻の自宅だった。

雑誌の編集者として働く感度の高いふたりの、等身大な「アートのある暮らし」を覗いてみよう。

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ドアを開けるとまず、玄関からのびる階段が目に飛び込んでくる。打ちっぱなしのコンクリートと木の質感のコントラストが絶妙だ。この階段を上がった2階部分はキッチン&ダイニングとリビング、さらにひとつ上の階が寝室になっている。

 

一緒に食事をする時間がとても好きだというふたり。ダイニングには、美しい青空を写した写真が飾られている。撮影したのは、女性誌や広告のビジュアルを多く手がけているフォトグラファーの今城純(いまじょう じゅん)さんだ。山本さんご夫妻は、今城さんの写真の大ファン。ほかにもふたつの作品がそれぞれ、寝室とトイレに飾られていた。

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レナさん「今城さんの作品と出会ったのは仕事の依頼をしたのがきっかけでした。私の担当している雑誌で撮影をお願いしたんです。そのとき、いま飾ってあるような海外をめぐって撮影した作品を拝見して。やわらかい空気感に惹かれて、ぜひ家に飾りたいなと思いました。なんだか見ているだけで癒される気がするんです」

レナさんをきっかけにレオさんも今城さんの作品と出会い、今ではふたり揃って写真展に訪れているという。購入した写真集には「レオ&レナへ」という今城さん直筆のメッセージが添えられていた。

レオさんとレナさんの間では、ダイニングの空の写真が「夏」、本棚に飾った湖畔の写真が「秋」、雪のなかに佇む親子を写した写真が「冬」と、四季を意識して作品を集めているのだという。残すは「春」を感じる写真だけだ。

優しい光が降り注ぐリビング。

食事の後、ふたりでくつろいでいることが多いというリビング。この空間にもさりげなくアートが存在している。

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シマダテツヤさんの作品とはふたりが通うカフェ・私立珈琲小学校で行われていた展覧会で出会ったという。レオさんいわく、繊細な鉛筆のタッチと儚げな雰囲気に心をつかまれたのだそうだ。

また、3階へ続く階段にも、シマダテツヤさんの作品が飾られていた。こちらは、ポップな色使いとコミカルなシーンが印象的でまた違った雰囲気の作品になっている。

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レオさん「実はこの絵は、私立珈琲小学校のトイレに飾られていたものなんです。パッと目に入ったとき、めちゃくちゃいいなって思って。ひと目惚れでした」

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Mariya Suzukiさんにお願いをして描いてもらったイラスト(左)
裏にはレオさんのプロポーズの言葉が書かれているそうです。

3階にはほかにも、作品や写真などのアートが多く飾られているが、主役はこの本棚だろう。

編集者というふたりの職業柄、さまざまな種類の本が目に入るが、そのなかでも写真集や絵本が多く並んでいるのが興味深い。

レオさんが購入した写真集の一部。アーティスト性の高い作品が多く見受けられる。

こちらはレナさんが購入したものの一部。
今城さんの写真集のほか、仕事の参考になるようなものを多く集めているという。

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お互いが購入した写真集は、勝手に見合って自然に共有しているというふたり。見当たらないと思ったら、相手が会社に持っていって、仕事の参考にしていたということもよくあるんだとか。

レオさんが初めて購入した写真集。まるで絵画のような雰囲気に引き込まれてしまう。

TIM WALKERの写真集は、レナさんの仕事にインスピレーションを与えてくれるんだとか。

写真やイラストが”観る”アートだとしたら、山本さん夫妻の自宅に”使う”アートも眠っている。それが、日本国内や世界各地から集めてきた食器類だ。

レナさんが料理好きということもあり、ふたりで使うための食器をこだわって集めるようになったんだとか。

海外で購入した食器類。左から時計回りに、トルコ、スペイン、ケニアで購入。

多くの食器コレクションのなかでもひときわ目立っているのが、両側にヒョウをかたどった木像がついたボウル。新婚旅行で訪れたケニアで購入したという。

レオさん「こんなにインパクトのある食器なら、食卓に登場するたびに新婚旅行のことを思い出して楽しい気持ちになれるんじゃないかなって。それに、友だちを招いて食事をするときもきっと話題にしてくれるじゃないですか。会話の種が生まれるのがいいなって思ったんです」

一方、和の雰囲気が漂う漆器も数多く並んでいる。これらの漆器は、ほとんどがレオさんのお母様からの贈り物。

レナさん「義実家で使っていたもののなかから、お義母さんが私たちふたりで使えそうなものを譲ってくれたんです」

レオさん「はじめはあまり漆器に興味はなかったんですが、実際に使ってみると魅力を感じるようになって。いくつかの漆器が層になって重なっている入子組椀は、雑誌で見かけたものがどうしてもほしくて、わざわざふたりで京都まで買いに出かけたんですよ

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写真やイラスト、そして食器類と、さまざまなアートに囲まれて生活しているふたり。写真展や食器屋めぐりにふたりで出かける機会はとても多いという。

レオさん「写真展や食器屋さんに行ったら、どれが気に入ったか「せーの」で一緒に指差すんです。それがぴったり合ったときには即決して買ってしまいますね。買って帰ってきてから、どこに飾ろうか、どこに置こうかって悩んでいます(笑)」

レナさん「ふたりともいいなって思うものが似ていて、「せーの」で指差ししても合わないことはあんまりないんです。家の近くに蔦屋書店があるので、なにかイベントがあったらふたりで出かけることが多いですね」

山本さんご夫妻のお話を伺っていると、アートが人と人をつなぐ媒介になっているように思えた。写真展や食器屋めぐりが、きっとふたりの仲を深めているのだろうし、レオさんのお母様から贈られた漆器も家族のつながりを感じさせる。友人を招いた食卓にユニークな食器を並べて話の種にしたいというのも、アートがコミュニケーションツールとして活きてくる例のひとつだろう。

人と人とをつなぐ媒介として、生活のなかに取り入れる。そんな山本さんご夫妻とアートの関係性は、多くの人が参考にできる等身大の姿のような気がする。

 

kakite : kondo sena / photo : Yuexin Zeng / EDIT by:PLART & BrightLogg,Inc.

 


Thanks a lot for Leo & Rena



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