【連載】アートがビジネスにくれるもの vol.3 「融合していくアートとビジネス」GEORGE CREATIVE COMPANY代表 天野譲滋

PLART編集部 2017.7.15
SERIES

7月15日号

連載「アートがビジネスにくれるもの」とは?

昔から、あこがれのビジネスマンには、アート好きな人が多かった。

その共通点はなんだろう?

それは、「人と違う視点を持っていること」ではなかろうか。

ゼロから生まれてくるアートが好きで、そして、自分も新しい価値を創る。

未開拓のシーンに挑戦するビジネスマンに憧れを持ち、少しでも近づきたくて、僕らは働く。

その人にはなれないけど、アートを通して同じ視点を取り入れる事は出来るかも?

アートには「新しい価値を生み出すヒント」がきっと、あるから。

「デザイン ビジネス プロデューサー」

それが、天野譲滋さん(以下 ジョージさん)の肩書きだ。

ジョージさんの会社、GEORGE CREATIVE COMPANYは、「行ってみたい」「食べたい」などといった、誰もがワクワクする瞬間を、デザイン、空間や体験を通してプロジェクトを創り上げる

過去には、東京・青山にあるインテリアショップ「CIBONEや全国展開のライフスタイルショップ「GEORGE’S」などを手がけたジョージさん

現在も、真っ白なコンバースのスニーカーに、自分のイニシャルや好きなアーティストのデザインをその場でプリントできる直営ショップ「White atelier BY CONVERSEや、東京国立博物館公式の「風神雷神フィギュア」、JR町田駅のハンドドリップコーヒースタンドなど、数々のヒット商品や企画を世に送り出している。

東京国立博物館公式の「風神雷神フィギュア」

「デザインやアートを切り口にいろんなビジネスを企画します。ただ面白い商品やおしゃれな空間を手がけるだけでなく、リアルに売上や利益を上げていくそういった姿勢から、ビジネスという言葉を入れた肩書き「デザイン ビジネス プロデューサー」と名乗っています」

そう語るジョージさんからは、「商売」に対する強いこだわりが感じられた。

 

デザイン」と「ビジネス」という視点

聞けば、実家が家具屋だったという生まれ育った環境の影響もあり、大学ではインテリアデザインを学ぶものの、単なるデザイナーになりたいとは思ったことがなく、常にビジネスという視点を持ち続けていた。

「芸大に入るための浪人中、一日中デッサンを描いていました。同じモチーフを朝から晩まで見続け、鉛筆一本で、例えばりんごの美味しさや硬さ、空気感を表現します。『見る』『表現する』という経験が、今の仕事に活かされているのを痛感しています

デザインの視点を持ちつつ、商売がしたいと思っていたジョージさん。大学卒業時には早速、家具とライフスタイルを融合させた「ジョージズファニチュア」を創業した。

 

「スーパーお客様目線」が基準

ジョージさんが手がける商品や空間、企画は、自らの店を始めた当初から一貫して変わらない。それは、「スーパーお客様目線」だ。

「何かをつくるとき、手がけるときはいつも、『自分が欲しいかどうか』を徹底して考えます。この値段で自腹で買うか、貴重な時間をつかってそこへ行きたいと思うか。自分とは異なる層への企画だったら、例えば『自分が10代の女の子だったら欲しいか』と憑依します。また、いろんなライフスタイルを提案することが多いのですが、必ずそのお客さんの『半歩先』を提案します。一歩や二歩先だと、自分ごととして考えてもらえないから……。

いくら手がける企画が大規模でも、それを受け取る側の感情や行動、ライフスタイルを決して忘れない。それが、ジョージさんが手がける企画が次々とヒットする所以だ。

 

「合わせ技一本」

ジョージさんがビジネスにおいてこだわるのは、商品をつくる段階のときだけではない。数々の企画は、立案を依頼される前、アイディアをストックする段階からすでに始まっている。

「企画を提案するのが仕事ですから、独自性のあるビジネスアイディアは欠かせません。ですが、アイディアは天からは降ってはこない。一から新たなことを創造するのは、とても難しい。 そこで僕は、既存のアイディアを『掛け合わせる』ことにこだわっています。 一つひとつは新しくなくても、組み合わせ次第で新しいクリエイティブなものになります。
とにかく僕は情報を雑多にインプットしてますね。

週5日の会食で異業種の方から話を聞いたり、会食後は自宅で録画したいろんなジャンルのテレビ番組を1.3倍速で見て、頭の中にある小さい引き出しに、一つひとつアイディアをストックしていきます。それが、面白い企画の源泉になります

アイディアは待っていても降ってこないし、新しく産み出すのは難しい。

それがわかっているからこそ、ジョージさんは能動的に情報を得ることを習慣としている

 

アートはビジネスを差別化する

ものが溢れている今日は、単にものを売るだけでは売れないので、付随するストーリーや体験が大事になってくる。その点において、アートが果たす役割は大きい。

かっこいいデザインや奇抜な企画など、ある程度は出尽くした感はあります。だからこそ、アートが入り込んだ商品はこれからますます増えていくはず。町田駅につくったコーヒースタンドですが、カップには地元の幼稚園児が描いた絵があしらわれています。とても味のある絵で、ファンもつきました。もちろん、売れなければ意味がありませんが、アートは商品を差別化する上で、今後ますます重要なファクターになってくるでしょう

 

日本人にアートを身近にしていきたい

アートとビジネスの融合は、私たちがアートを身近に感じるきっかけにもなる。

「日本人にとって、アートは身近なものではないと感じています。アート作品を買う場所もなければ、絵を買って家で飾る場所もない。でも、絵を買って飾るだけがアートではありません。商品や体験に、アートの要素を入れていくことができる。アートとビジネスは、今後ますます融合していくでしょう

GEORGE CREATIVE COMPANYでは、数人のアーティストのマネジメントもやっています。今の時代、アーティストも受け身では作品は売れない。どうやってメーカーや企業と組んでいくか、自分をアピールしていくか、そういったこともアーティストには求められてきています」

アーティスト・Ed TSUWAKIさんの作品。

一方で、アーティストにとってチャンスがある時代だとも。機械化やAIが進む時代、これからはデザインやアートなど、クリエイティブ系の仕事がますます重要になってくるからだ。

いろんなドアが並ぶオフィスのエントランス。

アーティストユニット magmaの作品

今後は子ども向けのデザインワークショップなどもどんどんやっていきたいです。建築家やデザイナー、アーティストと組んで、彼らが直接子どもたちに教えることで、子供たちが『こんな仕事があるんだ、なってみたいと思うきっかけになってくれればうれしい。日本人にアートを身近にしていく。これは、私のライフワークでもあります」

アートとビジネスが融合していく時代において、「これはアートではない」「アートはビジネスのためにあるのではない」といった声も、あがるかもしれない。

だが、ビジネスに入り込んだアートは、アートの一つの形であり、ビジネスにとってもチャンスであり、どちらにとっても可能性のある『合わせ技』なのではないか。

GEORGE CREATIVE COMPANYを率いるジョージさんは、そんなアートとビジネスの融合を、これまでも、そしてこれからもますます牽引していくのだろう。

 

 

kakite: 菅原沙妃/photo by BrightLogg,Inc./EDIT by PLART & BrightLogg,Inc.


天野譲滋 / GEORGE AMANO

GEORGE CREATIVE COMPANY代表

京都生まれ。 株式会社ジョージ・クリエイティブ・カンパニー代表取締役社長 話題性と売れる物販や飲食のショッププロデュース。 メーカーとデザイナーをディレクションした売れる商品開発。 リアルな企業戦略プロモーションやマーケティングを多数手がける。 デザインビジネスプロデューサーとして「デザイン」をビジネスとして成立させるプロフェッショナルとして活躍。 多数の若手デザイナーやクリエーターとプロジェクトをおこない、信頼と親密なネットワークを持つ。 前職では、ライフスタイルショップのシボネと国立新美術館のスーベニアフロムトーキョーや全国多店舗展開のジョージズを創業。 関連会社ではDEAN&DELUCA JAPANを運営。 株式会社ジョージ・クリエイティブ・カンパニーは放送作家の小山薫堂率いる株式会社オレンジ&パートナーズと 資本業務提携し、グループ会社になる。 取引先 電通、博報堂、セガサミー、HIS、SUBARU、羽田空港、コンバース、コカコーラ、ソフトバンク、伊勢丹百貨店、阪急百貨店、 阪神百貨店、イオン、海外案件などのプロジェクト多数。

http://www.georgecc.com/



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